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アイシングは逆効果?RICEからPEACE & LOVEへ変わった理由

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アイシングは逆効果?RICEからPEACE & LOVEへ変わった理由

こんにちは、けんこうカイロプラクティックセンター 岩崎久弥(いわざきひさや)です。




アイシングはなぜ見直された?RICEからPEACE & LOVEへ変化した理由

捻挫や肉離れをしたら、まず氷で冷やす——。


かつては「RICE処置」がスポーツ外傷に対する応急処置の定番でした。しかし現在は、アイシングを習慣的に続けるのではなく、目的や時間を考えて使い分ける考え方へ変わりつつあります。



その背景にあるのが、炎症を単なる悪者として抑えるのではなく、組織修復に必要な反応として捉えるようになったことです。

私がカイロプラクティック大学時代に学んだのは、RICE療法とちょっと進化したPRICE療法というものでした。


ただし、アイシングが完全に否定されたわけではありません。冷却には一時的に痛みや腫れを抑える働きがあり、現在も応急処置として認めている救急ガイドラインがあります。





RICE処置とは

RICEは、次の4つの処置の頭文字を組み合わせた言葉です。
✅️ Rest:安静
✅️ Ice:冷却
✅️ Compression:圧迫
✅️ Elevation:挙上


長年にわたり、捻挫や打撲、肉離れなどの急性外傷に対する基本的な応急処置として広く使われてきました。

冷却すると皮膚や浅い組織の温度が下がり、神経の伝達速度も低下します。そのため、痛みを感じにくくする効果が期待できます。

一方で、RICEは「安静と冷却」を重視するため、必要以上に動かさない期間が長くなったり、治癒に必要な炎症反応まで抑えたりする可能性が指摘されるようになりました。

PEACE & LOVEとは

2019年、British Journal of Sports Medicineで、軟部組織損傷に対する新しい考え方として「PEACE & LOVE」が提案されました。
受傷直後を「PEACE」、その後の回復期を「LOVE」で表します。

受傷直後のPEACE


✅️ Protection:保護
✅️ Elevation:挙上
✅️ Avoid anti-inflammatory modalities:抗炎症的な処置を避ける
✅️ Compression:圧迫
✅️ Education:適切な情報提供


回復期のLOVE


✅️ Load:適切な負荷
✅️ Optimism:前向きな見通し
✅️ Vascularisation:痛みの範囲内で行う有酸素運動
✅️ Exercise:運動療法


PEACE & LOVEの特徴は、受傷後に長期間安静にするのではなく、状態に合わせて適切な負荷と運動を取り入れる点です。

なお、PEACE & LOVEは有力な臨床的フレームワークですが、すべての救急・スポーツ医療ガイドラインがRICEやアイシングを全面的に廃止したわけではありません。



なんとなく、私はラブ&ピースと言ってしまいますが。順番は、PEACE & LOVEです。

アイシングが見直された3つの理由

1.筋再生を妨げる可能性が指摘された


筋肉が損傷すると、炎症細胞やマクロファージと呼ばれる免疫細胞が患部へ集まります。

マクロファージは、損傷した組織の除去や修復の調整に関わる重要な細胞です。炎症を起こすだけの細胞ではなく、筋再生を進める役割も持っています。

2021年に発表されたマウスの研究では、筋損傷後にアイシングを行うと、炎症細胞が損傷した筋線維へ入る過程が遅れ、壊死した組織の除去や筋線維の再生にも変化が生じました。

この結果から、過度な冷却が筋再生の効率を低下させる可能性が示唆されています。



ただし、この研究は人ではなくマウスを対象としています。冷却条件や筋損傷の起こし方も実際のスポーツ外傷とは異なるため、人の肉離れにそのまま当てはめることはできません。


2.炎症は組織修復に必要な反応だから


以前は、腫れや炎症をできる限り抑えることが、早期回復につながると考えられていました。
しかし現在では、炎症は組織修復を開始するために必要な生理反応でもあると考えられています。
炎症反応には、次のような役割があります。
✅️ 損傷した組織を処理する
✅️ 修復に必要な細胞を患部へ集める
✅️ 新しい血管や組織の形成を促す
✅️ 次の再生段階へ移行するための信号を出す


アイシングによって血管が収縮し、組織の温度や代謝が低下すると、痛みや腫れは一時的に軽くなる可能性があります。


一方、必要以上に強く、長く、繰り返し冷却すると、修復に必要な炎症反応や血流まで抑える可能性があります。


大切なのは炎症を完全に消すことではなく、過剰な反応を避けながら、正常な修復過程を支えることです。





3.人で治癒を早める根拠が不足している


2024年に発表されたスポーツ外傷と冷却療法に関する批判的レビューでは、アイシングに鎮痛効果がある一方、人の研究では次の効果を示す十分な証拠がないと報告されています。
✅️ 二次的な組織損傷を防ぐ
✅️ 組織再生を促進する
✅️ 機能回復を早める
✅️ 競技復帰までの期間を短縮する


つまり、アイシングは「痛みを軽くする可能性がある処置」ですが、「損傷した組織を早く治す処置」とは言い切れません。





2021年のマクロファージ研究で分かったこと


2021年の研究では、電気刺激によって筋損傷を起こしたマウスにアイシングを行い、筋組織の変化を調べました。
アイシングを行った群では、次の変化が観察されています。


✅️ 炎症細胞が損傷筋線維へ入る過程が遅れた
✅️ 壊死した筋組織の除去が遅れた
✅️ マクロファージの反応パターンが変化した
✅️ 14日後にも小さな再生筋線維の割合が多かった


痛みの軽減と組織回復は、別で考えて下さい。

怪我の直後は、やはり痛み優先でアイシングは必要かと私は考えています。



研究者は、アイシングが筋形成因子を直接抑えたというよりも、損傷組織の除去やマクロファージの動態を変化させ、筋再生の効率を低下させた可能性を指摘しています。

ただし、ここで注意したいのは「アイシングをすると、人の筋肉が必ず治りにくくなる」と証明されたわけではないことです。


現時点では、動物研究で示された懸念を、人の治療でどの程度重視すべきかを検討している段階です。





アイシングは人の治癒を遅らせるのか?


ここで問題になるのは、アイシングはやってもいいのか良くないのか?


結論からいうと、人の捻挫や肉離れに対して、アイシングが治癒を遅らせると断定できるだけの臨床的証拠はまだ不足しています。

現在分かっていることは、次のように整理できます。

比較的確認されていること


冷却によって一時的に痛みが軽くなる
急性期の腫れを軽減する可能性がある
皮膚へ直接当てると冷却障害を起こす危険がある




まだ分かっていないこと


人の筋肉や靱帯の再生を遅らせるか
最適な冷却温度と時間
何時間後まで使用してよいか
重症度による効果の違い
競技復帰までの期間を短縮できるか


したがって、「24時間以内なら安全」「24~72時間を過ぎたら有害」という一律の境界は確立されていません。


2024年のレビューでは、受傷後最初の6時間程度は鎮痛などを目的に使用できる可能性がある一方、12時間以降は動物研究上の懸念から慎重に使用すべきと提案されています。

ただし、これは確定した世界共通の時間基準ではありません。



アイシングが役立つ場面


アイシングは完全に否定された処置ではありません。


2024年の米国心臓協会・米国赤十字の応急処置ガイドラインでは、急性の捻挫・筋挫傷に対し、痛みや腫れを和らげる目的で冷却を行うことは有用とされています。


考えられる使用目的は次のとおりです。


受傷直後の強い痛みを一時的に和らげたい
腫れによる苦痛を軽減したい
痛みを抑えて安全な移動や診察につなげたい
鎮痛薬を使えない、または減らしたい


目的はあくまでも症状の緩和です。


「冷やせば早く治る」「腫れを完全に止めた方がよい」という考え方ではなく、必要なときに短時間使用する補助的な手段として捉えるのが適切です。





アイシングを控えたい場面


次のような場合は、漫然とした冷却を避けることが望まれます。

捻挫をしたらすぐにアイシングまではあっていますが、その後が大切です



痛みが十分に落ち着いている
冷却する明確な目的がない
長時間または頻回に冷やし続けている
冷却によって皮膚の感覚がなくなっている
回復期に入り、適切な運動や負荷が必要になっている
冷却によって身体を動かす機会が減っている
重度の筋損傷や骨折が疑われる


特に重度の肉離れや靱帯損傷では、アイシングだけで対処せず、医療機関で損傷の程度を評価してもらう必要があります。





安全にアイシングする方法


アイシングを行う場合は、冷却障害を防ぐことが重要です。


氷を皮膚へ直接当てない
氷や保冷剤を薄い布や湿らせたタオルで包む
1回20~30分以内を目安にする
皮膚の色と感覚を定期的に確認する
強い痛み、灼熱感、皮膚の白変があれば中止する
冷却したまま眠らない
強く圧迫しながら冷却しない


感覚障害や末梢循環障害がある人は、冷たさや皮膚の異常に気づきにくいため、自己判断で使用しない方が安全です。





受診が必要な症状


次のような場合は、冷却を続けるよりも医療機関を受診してください。

けんこうカイロプラクティックセンターに来院されて、このようなケースの方は、すぐに病院の受診をすすめます。



体重をかけられない
関節や手足が明らかに変形している
急激に腫れが大きくなる
強い内出血が広がっている
筋肉が切れたような感覚があった
しびれや感覚低下がある
手足が白い、青い、または冷たい
痛みが時間とともに強くなる
数日経過しても改善しない
頭部・頸部・脊椎の損傷が疑われる




まとめ


アイシングに対する現在の考え方は、次の一文にまとめられます。

「アイシングは痛みの緩和には役立つ可能性があるが、治癒そのものを早めるとは証明されていない」


動物研究では、過度な冷却がマクロファージの反応や筋再生に影響する可能性が示されています。一方、人の組織修復をどの程度遅らせるかは、まだ明確になっていません。
そのため、アイシングを全面的に禁止する必要はありませんが、習慣的・長時間に使用するのではなく、受傷直後の鎮痛や腫れによる苦痛の軽減など、明確な目的がある場合に限定することが大切です。
痛みが落ち着いた後は、患部を守り続けるだけではなく、専門家の指導のもとで適切な負荷、血流を促す活動、運動療法へ移行することが回復に重要です。
※本記事は一般的な医療・健康情報です。個別の診断や治療方針を示すものではありません。強い痛み、変形、しびれ、著しい腫れがある場合は医療機関へご相談ください。

参考文献


– Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. British Journal of Sports Medicine. 2020. https://doi.org/10.1136/bjsports-2019-101253

– Kawashima M, et al. Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice. Journal of Applied Physiology. 2021. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.01069.2020

– Racinais S, et al. Cryotherapy for treating soft tissue injuries in sport medicine: a critical review. British Journal of Sports Medicine. 2024. https://doi.org/10.1136/bjsports-2024-108304

– American Heart Association and American Red Cross. 2024 Guidelines for First Aid. https://cpr.heart.org/en/resuscitation-science/2024-first-aid-guidelines


来院されたお客さまには、適切なアドバイスをさせて頂きます。ご来院お待ちしています。

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